助産所

助産所は、助産師が管理する9床以下のアットホームな施設です。女性に備わっている「産み育てる力」を十分に発揮することで自然な出産ができることや女性の性と生殖にかかわる健康に関して相談できることが女性にとっての魅力です。
助産師にとっては、女性の「産み育てる力」を、最大限発揮できるよう支援するために、専門職として自律して助産ケアを提供できること、地域に密着した活動を実践でき、女性と家族の成長発達を見守ることができること等が助産所で働く魅力です。

仕事の内容

助産所は正常な妊産婦で家族の同意もあり、医療介入の少ない自分主体の自然なお産をしたいと思える妊産婦が利用します。妊産婦およびその家族が助産所をよく理解し納得したうえで助産所での分娩が成立します。

<仕事内容>

妊婦健診:助産所見学とオリエンテーション、説明と同意、触知による腹部健診、超音波診断エコー、各期における妊娠期の健康管理指導

嘱託医・嘱託医療機関連携強化:ポイント健診案内、情報提供書作成、報告書作成、カンファレンス、ネットワークづくり

母乳育児支援(授乳指導、乳房ケア、乳房トラブル時の対応等)

入院の対応:説明と判断、夜勤、母児の観察、調理

分娩期の看護:分娩監視装着、判読、分娩介助、間接介助、記録

包括指示による対応:血管確保、薬品の取り扱いと使用と説明

異常時の対応:緊急時連絡方法、産科出血対応、NCPR

新生児看護:体重測定・授乳、排泄チェック、黄疸チェック(経皮)

新生児異常時の対応:血糖値チェック、酸素飽和度の測定、酸素の取り扱い

産褥ケア:全身観察、子宮収縮、子宮底、硬度観察、悪露の観察、乳房ケア

退院指導:家族との関わり方、休息の必要性、産後の退行と進行観察、児の観察方法指導

受胎調節指導:避妊のこと、好適妊娠時期

産後母児健診:2週間健診、1ヶ月健診、2ヶ月健診

思春期相談:性教育、出前講座

イベント企画運営:マタニティヨガ、産後ヨガ、ベビーマッサージ

助産所の経営運営管理:人員確保、給料清算支給、事業の収支決算、分娩入院費請求清算、衛生材料注文・スタッフ統括、事業統括

社会的意義:地域の母子のために専門職として知識や技術を提供し安全で安心した子育て、環境の場を設置し助産師教育、助産師の質を高める

一日の流れ(例)

1
8:30
環境整備
2
8:50
申し送り・1日の業務確認
3
9:00
妊婦健診・母乳マッサージ、入院の母子ケア
4
12:00~13:00
昼食・ミニカンファレンス
5
13:00~
母乳マッサージ、記録
6
16:00
外来終了
ミニカンファレンス
業務の整理
7
17:00
退社(入院がない場合)
8
18:00
申し送り(入院患者がいる場合)
9
18:00~9:00
(入院患者がいる場合)
夜勤 助産師1名
※入院連絡があった場合、待機助産師、院長が助産所へ出向

働く人のエピソード

[60代/女性]

助産師として働き始めたのは保健師を10年勤務した後でした。分娩数の多い産婦人科医院で3年お産の勉強をさせていただき、公立病院へ変わりました。病院では医師が2名+非常勤医1名と少なく、今でいう助産外来も助産師の意見で実施していました。分娩では医師が立ち会うため手術の時は分娩進行に気を使ったものです。産科医師不足により、産婦人科病棟の閉鎖が決まり、助産師を20年経験した私は助産院開業のため退職しました。開業してからは医師のいないお産で緊張の連続ですが、無事出産が終わった時の喜びは格別です。病院では分娩、産褥、新生児に寄り添っていると自負していた関わりでしたが、開業してからは「押し付けのケアをしていたのだろうか」と反省ばかりで、今でも発見がたくさんあります。開業して10年、お母さんや赤ちゃんへ今以上に寄り添える助産師として地域で活動していこうと思います。

私のキャリア

市町村→有床診療所→病院(400床~499床)→助産所

[50代/女性]

私と現勤務先の助産院の院長は職場の同期で、産科単科の病院に勤務していました。その時点でいずれ開業しようという気持ちはお互いありませんでした。ところがその病院が閉院することになり、助産師として助産師外来、フリースタイル分娩、母乳育児と充実した仕事を他の施設で行うことはほぼ不可能だと感じ、同じ内容で仕事を続けるためと考えた結果、助産院を開設することを決めました。助産院を開設することは想像以上にたいへんでしたが、病院では経験できないことも多く、17年経過した今も助産院を利用される皆様を通じて日々学ばせていただいていると思っています。また2015年にはCLoCMiPレベルⅢの認証を受け「アドバンス助産師」となりました。これは助産師としての自分自身の能力を明確にする一つの指標でもあります。少子化の今だからこそ、助産師としての役割は多岐にわたっていると常に感じています。助産師の仕事を続けていくために、これからもいろいろな情報をキャッチし、仕事に役立てられる力を身につけていけるように努力していきたいと思います。

私のキャリア

病院(99床以下)→病院(200~399床)→助産所

[60代/女性]

1970年代、出生数200万人、出生率2.0%、日本のお産が少子化に差し掛かる頃、離島で1名の産婦人科医と一緒に勤務していた。島では無医村地区に在住の妊産婦、多産、若年妊産婦、合併症既往と様々な環境で妊娠期を過ごしている女性や母子と関わっていた。切迫早産で陣発してもNICUの施設がない。児の安全を考えると緊急搬送するしかない。院長はセスナ機を購入設置しパイロットを雇用、緊急事態が発生すると航空運輸省に連絡、管制塔より天候のOKが出ると周産期搬送の準備をして飛行するという命がけの搬送をしていた。島は海あり、陸あり、空ありとダイナミックでワイルドな展開が起こる。小さな命が救命されたことや悪天候のフライトの中、必死に無事を祈って着地した時の喜びは感動的だった。若い頃に体験した事例、地域の医療連携、命に向き合う、すべてが今も活きている。
島と大都市の環境は大きな差があるけれどいのちの重さは変わらない。助産師で良かった!

私のキャリア

病院(99床以下)→病院

キャリアプラン

助産所を開業する、またはそこに勤務する助産師は、一定期間、医療施設や診療所で助産実践を経験していることが望まれます。それは、助産所で異常が発生した時に適切に対応をするためです。
助産師が身につけるべき実践能力を評価する仕組みとして、日本助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)レベルⅢ認証制度があります。本制度は、病院や助産所等、就業する場所に関係なく、どのような助産実践を習熟する必要があるか、どのような学習が必要か等を詳細に決めており、免許の更新制度のない日本においての助産師の質を保証しています。
助産所では、助産師として自律的に助産ケアを提供する(妊娠期から出産、育児期の支援を行う等)以外に、地域において、学校等での命の授業等の講座を担当することや、女性の生涯における性と生殖に関する健康について支援をすることから、ウイメンズヘルスケア(女性の性と生殖に関する健康や権利に対する支援)領域の能力を身につけることができます。また、助産師として機能するために必要な能力のすべてを存分に発揮することができます。助産所で勤務した助産師はその経験をいかし、病院や診療所等に再就職して院内助産を担当する場合もあります。助産所を開業した助産師の多くは、助産ケアをより熟練させ、地域の母子の支援者として活躍します。