長期ブランクからの復職。子どもたちに頑張る母の姿を
S.Mさん 40代女性
ブランク10年以上。諦めていた看護職への再挑戦
2人目の子どもを出産するまで約7年間にわたり、手術室看護師として急性期病院に勤務していました。看護師の仕事は好きだったので、できれば続けたいと思っていたのですが、同じ医療業界で働く主人の仕事が不規則だったこともあり、夫婦で仕事と子育てを両立する生活は難しいと感じました。それなら、私は子育てに専念して、子どもたちの成長をじっくり見守る方が良いと思い、退職することにしたんです。その後、子育てが一段落ついたころに、パートで喫茶店の接客などをしていましたが、看護職に戻ることは全く考えていませんでした。看護職を離れてから10年以上の月日が流れたある日のこと、何気なく求人情報を見ていたら、「看護師募集」の文字に目が留まりました。それは、1日4時間勤務のパートのお仕事だったのですが、「“手術室経験”のある人は、備考欄に記載してください」の一文が書かれていました。手術室経験が長く、この仕事が好きだった私としては、その求人情報を見たとき、10年以上のブランクがあっても、もう一度手術室看護師になれるかもしれないという期待に胸が膨らみました。
しかし、復職の可能性に一度は喜んだものの、やはり長期にわたり看護職から離れている現実を考えると、なかなか一歩が踏み出せず、結局その求人に応募することはできませんでした。経験があっても、長く現場から離れていて、最近の看護について何の知識もない私は、せっかく魅力的な求人情報を見つけても手を上げる勇気が出なかったんです。「もう、チャンスを逃したくない!」私は、しっかりと看護の勉強をして、復職の準備をしておこうと決めました。そこでまずチャレンジしようと考えたのは、岩手県ナースセンターが主催する復職研修に参加すること。早速、ナースセンターに申し込みをして、2020年の7月に3日間コースを受講することになりました。直接足を運び、看護技術のDVDを観ながら自己学習も行いました。
「看護用語に耳を慣らすこと」から始めた復帰への道
復職研修では看護職の用語が飛び交っていました。10年以上、こうした専門用語を聞く機会が全く無かった私としては、難しいような、懐かしいような…。なんだか不思議な感覚でしたね。でも復帰すると決めた私は、まずは看護用語に耳を慣らすことからスタート。看護技術の進歩にも驚きましたが、アドバンス・ケア・プランニングなど、患者さんやご家族の意思を尊重した看護に変化を遂げていることが印象的でした。看護職は以前よりも患者さんとの関わりが深くなり、さらに専門的な分野に発展していると感じましたね。研修の最終日に行われた復職相談で、自分には手術室経験があることと、復職後も手術室看護師として勤務をしたいことなどを伝えました。実は、研修を担当してくれたその施設が、今の私の職場です。私が研修を終えた頃には、その施設は求人募集をしていませんでしたが、ちょうど産休に入る人がいたことや、新しい術式を始めるタイミングで手術室に人材が欲しい時期だったようで、とんとん拍子に話が進み、採用してもらうことができたんです。
現在は、復職して4ヶ月です。念願の手術室勤務となり、嬉しいのですが、私が勤めていた頃と術式が変わっていることも多いため、必死で勉強中です。正直、分からないことが多く、くじけそうになる日もあります。「私には難しいのかな…」と悩むこともありますが、ここで諦めてしまうのは悔しいし、もったいないですよね。せっかく復職できたのだから、昔のように一人前の仕事ができるまで前進あるのみ!と思っています。現在、小学6年生の娘は、出産を機に、私が看護師を辞めたことを少し気にしていたようで、「看護師をやっているお母さんを見たい」と言われたときは驚きましたね。娘は、救命医になるのが夢なので、医療現場で頑張っている母の姿を見せなくてはと思っています。ブランクが長いと復職するのは不安だと思いますが、求人情報の中には「ブランクがある人も歓迎」という施設もありますから、もし復職を検討されている人がいたら、まずは、問い合わせから始めてみることをお勧めします。
プロフィール
1998年から岩手県内の急性期病院(500床以上)の手術室に勤務し、2人目の子どもを出産するタイミングで退職。しばらくの間、子育てに専念していたが、やりがいを感じていた手術室看護師の仕事にもう一度チャレンジしたく復職を決意。看護職再就業研修会を受講し、2020年10月から手術室看護師として復帰している。