実践に役立つ復職支援研修で15年ぶりの看護職復帰を実現
U.Yさん 50代女性
「資格を持っているのにもったいない」と、復職を決意
私は15年間看護師の仕事をしていましたが、退職後の15年間は専業主婦として家庭を支えてきました。主人が居酒屋を経営していたので、仕込みの手伝いと子育てで忙しい日々を送っていましたね。しかし、2020年に入って蔓延した新型コロナウイルス感染症の影響を受け、居酒屋を閉めることになったんです。これからは、自分も外で働いて家計を支えようと思い、仕事探しを始めました。当初は看護師の復職は考えておらず、近所のドラッグストアなどでパートとして働こうと思っていました。すると、看護学校時代の友人から「せっかく看護師の資格を持っているんだから、もったいないよ」と言われたんです。その友人から、東京都ナースプラザで復職支援研修や就業相談を受けられることも聞き、それがきっかけとなり、看護職への復帰を真剣に考えるようになりました。
復職するなら、特別養護老人ホームで働きたいという気持ちも芽生えてきましたね。家族が月に1回、ショートステイにお世話になっていたことがあるのですが、そこでケアワーカーさんや看護師さんの姿を目にする機会があり、とても良い仕事だなと感じていました。家族の支えになってくれていましたし、月に1回は私自身もゆっくりできる時間があり、とても助かっていました。そのため、今度は私が看護師としてその役を担いたいと思い、特別養護老人ホームに再就業することを目標に、復職に向けて進んでいくことを決めたんです。そして、東京都ナースプラザが主催する5日間コースの復職支援研修を受講しました。血糖測定の器械の取り扱い方を学び、患者さんをベッドから車いすへ移動する際の危険回避については、理学療法士さんから教わりました。また、研修の指定病院では、eラーニングシステムを導入していたため、動画で学ぶ機会もありました。研修を受けて、再確認したことと、新しい知識の両方を得ることができて、とても良かったです。無事に研修が終わって、いよいよ職探しと思っていたら、ちょうど家族がお世話になっていた特別養護老人ホームが求人募集をしていることを知り、すぐに応募。とんとん拍子に話が進み、2020年11月より復職することが決まりました。
家族以外の人と関わることで豊かな自分になれる
現在は、閉店した居酒屋の取り壊し作業をしている最中なので、特別養護老人ホームには週3回の午前中だけ勤務をしています。コロナ禍ということもあり、ショートステイは行っておらず、入所されている利用者さんの看護ケアをしています。復職後、私にとって不安だったのは、やはり復職前から課題に感じていた採血のことでしたね。初めはかなり緊張しましたが、徐々に慣れていくことができました。また、もし何かあったときは周りの先輩看護師に相談ができる環境なのも助かっています。ブランクが長かった私にとって、先輩看護師はとても心強い存在です。特別養護老人ホームには医師がずっといるわけではありません。利用者さんの状態について、ケアワーカーさんから相談を受けることもあります。自分で判断しながら利用者さんのケアをするのは大変ではありますが、やりがいも感じています。先日、ある利用者さんの足元に入れ歯が落ちていたので、ふとその人の顔に目をやると、意識を失っていたんです。不整脈を持っている利用者さんだったので、すぐに先輩看護師と一緒に、心電図をとりに行きました。とっさの出来事でしたが、復職支援研修で心電図についても学んでいたから、いざというときに冷静な行動ができたと思っています。
現在の職場は、若いケアワーカーさんが多くて活気があり、とても働きやすい環境です。閉店した居酒屋の後処理が一段落ついたら、午前中のみの勤務から、1日勤務に変更し、さらに勤務日数も徐々に増やしていけたらと思っています。一度でも看護の仕事をしたことがある人は、人のお世話が好きだと思うんです。初めは自分にはできないと思っていても、実際にやってみたらできることがたくさんあるはずです。家族以外の人と関わっていくことは、自分を豊かにしてくれると思います。私のように長期間のブランクがある方は、復職に対しての不安も大きいと思いますが、思い切って一歩を踏み出してみてほしいと思いますね。
プロフィール
看護専門学校を卒業後、大学の附属病院や系列のクリニックで15年間にわたり看護師として働いてきたが、その後、出産を機に退職。看護職からは離れ、ご主人の経営する居酒屋を手伝いながら2人の子どもを育ててきた。しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症の影響により、居酒屋が閉店することに。15年間のブランクを乗り越え、2020年11月、復職を果たした。