男性看護師の復職。定年しても「世の中の役に立ちたい」と復職を決意
U.Hさん 60代男性
保育園、コロナ対策本部など、看護師として様々な分野に貢献
38年間にわたり、看護師として病院に勤務していました。今まで仕事ばかりで家族と過ごす時間や趣味の時間が取れなかったので、60歳の定年を迎えたあとは、のんびり暮らそうと思っていました。ところが、定年退職をして3ヶ月を過ぎたころには、早くも飽きてしまったんです。毎日、掃除や洗濯をしたり、犬の散歩をしたりと、家事全般をしていたのですが、それでも時間が余っている気がしましたね。徐々に「世の中の役に立ちたい」という想いが強くなっていきました。
そこで2019年8月から鎌倉市の保育課に勤務することを決めました。それは月に7日間程度の勤務で、認可保育園を巡回訪問し、乳幼児の身体計測や健康観察が主な業務でした。12月末で保育課を退職したあとは、また家事全般をする毎日に戻ったのですが、それからしばらく経った2020年2月に、国内で新型コロナウイルス感染症の問題が発生したのです。ナースセンターからコロナ関連の業務を手伝ってもらえないかと打診をいただき、2月中旬から神奈川県庁のコロナ対策本部で勤務することになりました。ちょうど、クルーズ船が大黒ふ頭に入港しており、乗客の下船が開始されるタイミングでしたね。大黒ふ頭に2日間ほど出向き、各国の医療チームや国内の省庁、横浜市の保健所のスタッフなどに対して、業務でクルーズ船に乗る際の安全な防護服の取り扱い方を指導しました。私自身はクルーズ船に乗る業務ではありませんでしたが、乗船する職員と接触する機会はありましたので、家族は感染症に罹患するのではないかと心配していましたね。しっかり感染対策を行ったうえで勤務していましたが、万が一、罹患した場合の家での隔離方法などを予め家族と話し合いました。クルーズ船の緊急対応のあとは、神奈川県のコロナ感染症の専用ダイヤルや、健康増進課コロナ対策本部などでコールセンターの業務を担っていました。相談内容は多岐にわたりますが、当時は未知のウイルスに対する不安な声が多く寄せられていましたね。そのほか、自宅療養や宿泊療養している人たちの健康観察と健康相談なども受けていました。
新たな学びの機会を与えてくれるのは「職場」
現在は、神奈川県立スポーツセンターで看護師として勤務をしています。週に20時間、看護師2名で交代しながら業務にあたっています。主な業務内容としては、スポーツ施設の利用者の中で、怪我をしたり、具合が悪くなったりした人を救護する仕事になります。このように、私は定年退職をしたあとも社会と関わり、看護師という専門性を活かしながら様々な仕事をしてきました。私は60代になった今でも、「新しい看護の知識を身に付けたい」という強い想いがあります。そんな私に、新しいことを学ぶ環境を与えてくれるのは、「仕事をする場所」だと思っています。現在はスポーツセンターの仕事を通して、これまでなかなか触れることのなかったスポーツ医学について学ぶ機会を得ることができています。日々進歩する医学や看護の知識を習得しながら、働けるうちは働き続けたいと思っています。
看護の世界から離れ、ブランク期間が長ければ長いほど、復職することに不安を感じる人も多いと思います。もし私のように、自分が今まで培ってきた看護の知識や経験を、世の中に役立てたいと考えている人がいたら、ナースセンターやハローワークに相談してみるなど、まずは行動してみることをお勧めします。もし復職したいと思う病院の候補がいくつかあるならば、病院見学のリクエストをしてみるのも良いでしょう。また、男性看護師の復職先としては、病院もしくはスポーツセンターをはじめとした市町村が運営する健康増進の施設などが挙げられます。現在の日本において、男性看護師が活躍できる場は多いですが、デイサービスや保育園など福祉分野の一部では、男性が介入できないケースがあることも事実です。残念ながら男性看護師が病院以外の場所で復職する場合、その領域によっては、いくつかの制限が設けられていることもありますが、将来的にはそのような制限が外されて、男性看護師が今まで以上に幅広い分野で活躍できる世の中になっていくことを願っています。
プロフィール
看護師歴38年。高校卒業後、准看護師として東京都にある民間病院の精神科に7年間勤務。その後、神奈川県の総合リハビリテーションセンターで働きながら看護師の資格を取得し、定年退職の60歳まで勤め上げた。定年後も認可保育園の巡回訪問、新型コロナウイルス感染症に関わるコールセンターなどの仕事をしながら地域貢献を行っている。妻と3人の子ども、2匹のワンちゃんとともに、明るく賑やかな日々を送っている。